文化庁は19日、地域の有形・無形の文化財を組み合わせて魅力を発信し、観光振興などにつなげる「日本遺産」に21件を新たに認定した。2015年度からの累計で104件となり「20年度までに100件程度」とした目標に到達。県内からは千曲市の「月の都千曲―姨捨の棚田がつくる摩訶(まか)不思議な月景色『田毎(たごと)の月』」と、上田市の「レイラインがつなぐ『太陽と大地の聖地』〜龍と生きるまち信州上田・塩田平」の2件を新たに選定した。
今回で県関係の日本遺産は4件となった。さらに16年認定の「木曽路」には、岐阜県中津川市馬籠(まごめ)の「島崎藤村宅(馬籠宿本陣)跡」など文化財3件を追加指定。県境を越え、一体的な日本遺産となる。文化庁は今回で認定は最後とし当面は追加しない。
「月の都―」は棚田一つ一つに月が映る「田毎の月」の情景で知られる国名勝「姨捨の棚田」の一帯を、改めてアピール。千年以上も前の平安時代から文化人らを楽しませてきた魅力を発信する。
「レイライン―」は、夏至の日の出に向かって直線状に並ぶ三つの寺社と、周辺に点在する30ほどの文化財で構成。塩田平に伝わる竜神への雨乞い行事などとともに、地域の文化として打ち出す。
木曽郡6町村と塩尻市による「木曽路はすべて山の中〜山を守り山に生きる」にはほかに、木曽郡木曽町福島にある「旧帝室林野局木曽支局庁舎」と、一帯で親しまれている菓子「木曽の朴葉(ほおば)巻き」が追加指定された。
日本遺産は15年度から毎年認定。今回は全国から69件の申請があり、これまで認定遺産がなかった東京都からも初めて選ばれ全都道府県に拡大した。県内からは伊那市も、石材を加工した高遠藩ゆかりの職人「高遠石工」をテーマに提案したが、選ばれなかった。今後は既存の遺産の底上げを図る方針で、選考で漏れた候補の扱いも含めて有識者委員会で具体策を検討する。
県関係の日本遺産の認定は「木曽路」が最初。ほかに八ケ岳山麓の県内8市町村と山梨県6市による「星降る中部高地の縄文世界―数千年を遡(さかのぼ)る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅」も認定されている。
(2020年6月19日 信毎WEB版)
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