何かに期待する母…。 本紙記者、千葉の実家に
「オンライン帰省」
2020年8月5日 11時9分 「秋田魁新報社」電子版掲載引用転載
オンライン帰省で千葉県市川市の両親と画面越しに再会する記者
記者(37)の実家がある千葉県市川市は、感染拡大が続く東京都に隣接する。この夏は帰らないつもりだったが、ともに70代となった両親の体調も気掛かりだ。そこで、ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、オンライン帰省をしてみた。
(取材・「秋田魁新報社」藤原剣記者)
「今から帰るから」。4日午前10時、電話で両親にそう呼び掛けて〝帰省〟は始まった。父(74)はパソコンが不得手なため、事前準備では苦戦を覚悟していたが、程なくして互いの姿が画面に映し出された。「はいOK」と両親の感動は思ったより薄かったが、3分ほどで無事実家にたどり着けた。
知人の葬式のため3月に一度帰省していたので、顔を見るのは約5カ月ぶり。髪型を変えた母(70)と、何度もあくびをするマイペースな父。2人の後ろに映ったリビングの様子も懐かしい。電話では頻繁にやり取りしているが、元気そうな姿を画面越しに確認できて安心した。表情が見える分、電話やメールに比べて様子が伝わってくる。
話題は近況報告からコロナへ。旅行好きの両親は毎夏、国内各地に出掛けていたが、今年は自粛するという。都内に暮らす兄(43)の家族もしばらく実家には顔を出していないらしい。「今年はしょうがないね」と話す母は少し寂しげだった。
30分を過ぎた頃に、父がおもむろに老眼鏡を掛け、スマートフォンをいじりだした。飽きるのが早い、と指摘するも「男親はそんなもんだ」と目もくれない。秋田に帰るタイミングが訪れたようだ。
終わり際に父から「帰ってきていたら小遣いも渡せるけど、オンラインじゃ無理だな。俺が使っちゃうよ」とますます実家が恋しくなる一言をいただいてお開きに。父も母も「帰ってきた感じはしないけど、こういうのもいいね」と喜んでいた。
画面越しの再会を終え、別れ際に手を振りあう親子の姿を同僚の女性記者が撮影してくれた。両親の画面にも撮影の様子は映ったので、いまだ独身の記者を案じる母は「えっ?」と何かを期待したようだった。すぐに否定したが、オンラインでも親は相変わらずだなと感じた。
コロナが落ち着いた後の再会を約束し、パソコンを閉じた。
オンラインでは母の手料理を味わえないし、墓参りもできないが、交通費も感染リスクもゼロ。こんなに簡単なら、長期休みに限らず、これからも時々やってみようと思った。
他県ではオンライン帰省のユニークな楽しみ方が提案されている。首都圏在住の盛岡市出身者らでつくる団体は、故郷を身近に感じてもらおうと、米グーグルの衛星写真を利用したサービス「グーグルアース」を活用し、盛岡市内の観光地やランドマークをオンラインで巡るマップ「Kozukata(こずかた)」を作成、公開している。
名古屋長野県人会はホームページで、地元のライブカメラ映像を見ながらのオンライン帰省を勧めている(名古屋長野県人会HP5月掲載記事)。
秋田県も他人との接触を8割減らす手段の一つとして、ビデオ通話によるオンライン帰省を挙げている。県総務課は「今年は自分や家族の健康を守るために、オンラインで帰省して感染予防に努めてほしい」と呼び掛けている。
名古屋長野県人会ホームページの5月ゴールデンウイークについて、オンライン帰省を掲載していたところ 秋田魁新報社から
「秋田さきがけ新報社から電話がありました。ゴールデンウィークの時に貴会のHPにオンライン帰省の推奨活動をしてましたが、このお盆も同じですか?」との内容です。「コロナ禍での現状から、5月と同じです。」と回答しました。帰省は儘ならないので、信州の特産品の通販などをHPで広報活動をしています。」と、追加回答しました。名古屋長野県人会の活動内容が、8月5日付「秋田魁新報社」記事に掲載されます。
名古屋長野県人会事務局 対応
本日、 8月5日付「秋田魁新報社」電子版に記事が掲載されています。
株式会社ブランド総合研究所は、「オンライン帰省」という言葉を知っている人は26.0%となかなか浸透していないようで、60代前半では29.6%、60代後半では24.0%、そして70代以上では23.0%と年代が高いほど認知度は低い傾向にあります。なお、これまでにオンライン帰省をしたことがある人は3.2%と極めて少数です。
また、このたび60歳以上のシニアで、デジタル化に気後れしていると危機感を持っている人を対象とした「スマートフォン(スマホ)と帰省」についての調査をインターネットを利用して実施しました(調査時期:2020年7月、総回収数1124人)。
その結果、この夏に帰省をしない・してこない人が8割を超える82.5%を占めており、そのうち9割以上は新型コロナウイルス感染症の影響があることがわかりました。
2020.08.05 夕刊から引用転載。
コメントをお書きください