飯田市の遠山郷に鎌倉時代から伝わるとされる「遠山の霜月祭り」(国重要無形民俗文化財)が12月5日から、上村中郷の正八幡宮と南信濃小道木の熊野神社を皮切りに、15日まで計八神社で繰り広げられる。今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加者を飯田下伊那地域在住の氏子や保存会員に限定し、一般客の見学を禁止に。祭りの規模も大幅に縮小する。氏子らは未経験の事態に戸惑いながらも、安寧を願う祭りの意義や伝統継承の重さを胸に、前を向いている。
熊野神社は例年、昼すぎから神事を始め、湯釜の周りで舞を奉納して神様をもてなす「湯立て神楽」を深夜まで繰り広げているが、今年は午前中の約三時間で終わらせる。氏子らが着けて舞っていた三十七面の「面(おもて)」は、主要な八面ほどに絞る。例年は当日にしていた社殿の飾り付けなどの準備も事前に済ませる。
上村上町の正八幡宮でも、保存会員らが感染対策を講じた舞を考案した。マスクを着けたまま面をかぶり、二人一組の舞いは、二メートルほど間隔を空けて一人ずつで舞う。
明治元年に疫病が流行した際も、疫病退散の御利益がある津島神社(愛知県)の神をもてなしたといい「先人がやってきたことを踏襲しなければと感じた」。神社の鳥居には「新型コロナウイルス感染症鎮静祈願」と書いたのぼりを掲げた。かつて願いが成就したら祭りをもう一度奉納していたといい、コロナが収束したら来年の祭りを倍の規模でする予定という。
中郷では八年ほど前から地区外の「助っ人」を招いているが、今年は申し出をすべて断った。「助っ人のおかげで続けてこれたので忍びなかったが…。来年につなげたいと願ってやるしかない」と話した。
上村の四神社の祭りの様子は後日、飯田ケーブルテレビで放映される。
12月3日 13時28分更新: 中日新聞長野版WEB会員限定記事から。
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