長野県原産地呼称管理委員会による、長野県産の清酒及びワインの「酒類の地理的表示(GI)」指定にかかる申立(令和3年4月23日)について、令和3年6月30日に清酒とワインが同時に国税庁長官から指定を受けました。一つの産地が2つの酒類で同時に指定を受けるのは、国内で初となります。
清酒、ワインともに長野県
令和3年6月30日
「GI長野」の基準には、県産品の品質を高めブランド向上を目指して、平成14年度に創設された長野県原産地呼称管理制度の考え方が活かされています。
長野県内で収穫された一定の品質以上の米及び県内で採取された水を用い、県内で精米から醸造、瓶詰まで全ての工程を行うもの
長野県内で収穫された一定の品質以上のぶどうを用い、県内で醸造、熟成、瓶詰までの全ての工程を行うもの
酒類の確立した品質や社会的評価がその酒の産地と本質的なつながりがある場合において、国の保護によりその産地名を独占的に名乗ることができる制度です。
正しい産地であることを示すだけでなく、産地の名称が国内外で保護され、輸出の更なる拡大や国内におけるブランド価値の向上につながります。
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長野県の清酒について
令和3年6月30日指定
1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項
(1)酒類の特性について
長野の酒は総じて、雑味が少ない濃厚な味わいときれいで穏やかな香りが調和した酒質を有している。
米の旨味を凝縮したような濃厚な味わいは、雑味の少なさと相まって甘味や酸味が折り重なって口の中に広がり、清酒だけを飲んでも十分な満足感を得られることができるが、濃厚な味わいの料理と合わせて飲むことで料理の旨味を深めることができる。
また、きれいで穏やかな香りは、料理の風味を阻害しないよう、味わいに集中できる環境を口の中で整えるとともに、きれいで穏やかな余韻を残す。
(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて
イ 自然的要因
長野県は本州中央部に位置し、北西部には飛騨山脈(北アルプス)、南東部には赤石山脈(南アルプス)と、周囲を2,000mから3,000m級の高い山々に囲まれている。長野県の中央部にも木曽山脈(中央アルプス)があるなど、全域にわたり山岳が多くみられる急峻で複雑な地形である。総面積のほとんどが山地であり、その平均標高は1,000mを超えている。
これらの高い山々に降る雨や雪が、その急峻な地形と相まって、多数の河川を形成している。特に東北部に向かい流れる千曲川と犀川や、中央部に位置する諏訪湖を水源とし南流する天竜川では、河川に沿って盆地が形成されており、その盆地に沿って都市や農地が広がっている。
これらの地域は、内陸性の気候で標高が高いこともあって、7月から8月の日照時間が比較的長く気温も高くなるが、夜間には冷え込む傾向にあり気温の日較差が大きい。これにより、デンプン質が豊かに蓄積された酒造に適した米が収穫できる。
また、高い山々に囲まれていることにより米の育成時期に台風や降雨の影響も少なく、冷涼な気候も相まって病害虫の発生が少ない傾向にあり、米の栽培に係る農薬の使用も抑制することができる。
こうした米の栽培に適した自然環境にも起因して、長野県で収穫される玄米の農産物検査法に基づく検査規格における1等米の比率が、日本各地のものと比較して非常に高くなっている。
このような優れた米と、日本屈指の高い山々から流れる清冽な水により醸造される長野の清酒は、雑味が少ない濃厚な味わいときれいで穏やかな香りが調和した酒質を生み出す要因となっている。
ロ 人的要因
長野県は、積雪も多く高い山々に囲まれていることもあり、冬季に新たに食料を確保することが困難であったため、古くから味噌や漬物等の発酵食品をはじめとする様々な保存食が発達してきた。それらを用いた濃い味付けの料理が多かったことから、合わせて飲むための酒として、穏やかな香りで濃厚な味わいの酒質を目指して酒造りが行われてきた。
明治時代には、良酒造りで評判の高かった他県の杜氏を雇用した酒造りも行っていたようであるが、大正6年になると、長野県庁が農商課の中に酒造の専任技師を配置して醸造指導を開始するとともに、大正8年からは地元杜氏の教育のための講習会を開催するなど、地元産業振興のための地元杜氏の育成や酒造技術の向上を図るようになった。
昭和16年には、醸造技術育成の基幹となる長野県立醸造試験場が設置され、新規酵母の開発をはじめとした県内酒造業者の酒造技術向上に資する様々な取組を行ってきた。近年では、長野県工業技術総合センターが長野県酒造組合と協力して、酒造会社の新入社員を対象とした後継者育成のための「酒造技能士養成講座」を開催している。
また、長野県庁は平成14年に「長野県原産地呼称管理制度(Nagano Appellation Control)」を創設した。この制度は、農産物の原料や栽培方法、飼育方法、味覚による区別化を行うことにより、生産者が「長野県で生産・製造されたもの」を自信と責任を持って消費者にアピールしていくとともに、生産意欲の醸成を図ることを目的としたものであり、長野県産農産物のブランド化を目指したものである。清酒についても平成15年から認定を開始しており、長野らしい清酒の品質について明確化することに貢献してきた。
このように、官民・地域一体となって人材育成と醸造技術の向上の取組を行ってきたことにより、特性の維持・向上が図られてきた。
2 酒類の原料及び製法に関する事項
(1)原料
イ 米及び米こうじに、長野県内で収穫した玄米(農産物検査法(昭和26年法律第144号)により3等以上に格付けされたものに限る。)の精米(長野県内で玄米のぬか層の全部又は一部を取り除いたものに限る。)のみを用いたものであること。
ロ 水に長野県内で採水した水のみを用いたものであること。
ハ 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
ただし、酒税法施行令第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。
(2)製法
イ 酒税法第3条第7号イ又はロに規定する清酒の製造方法により、長野県内において製造したものであること。
ロ 製造工程上、貯蔵する場合は長野県内で行うこと。
ハ 消費者に引き渡すことを予定した容器に長野県内で詰めること。
3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項
地理的表示「長野」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
管理機関の名称:長野県原産地呼称管理委員会
住所:長野市大字南長野字幅下692番2
日本酒・ワイン振興室内
電話番号:026-235-7126
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