7月20日、2年生約250人が中央アルプス駒ケ岳(2956メートル)登山に。
1913(大正2)年の集団遭難で同窓会員を含む11人が亡くなった中箕輪尋常高等小学校を前身とする同校。
以前は麓から歩いて登り、稜線(りょうせん)上に立つ遭難記念碑を訪ねて校歌を歌うのが伝統だった。
5年ほど前からは、体力に応じてロープウエーの利用も選べるようにした。記念碑は変わらず訪ねていたが、新型コロナウイルス下では密集回避のために山小屋の定員が絞られ、宿泊も困難になった。碑までの日帰りの行程を組むのは難しく、2019年を最後に碑には行けていない。
県教育委員会によると、22年度に県内の公立中学校で学校登山を計画した割合は39%。19年度の60%から大きく減った。
県山岳総合センターは「原因は一概に言えないが、生徒の体力や天候の読みにくさを考慮して登山に代わる自然体験活動を取り入れる傾向は以前からあった。
上伊那地域では今夏、天候不良で中止した1校を除く13校が登山を実施。
中ア駒ケ岳に登った10校は全校がロープウエーを使った。
麓から登った世代や登山愛好者らの中には、その「手軽さ」を疑問視する声もある。
しかし、箕輪中では「より多くの生徒が参加できる」とロープウエー活用の利点を指摘。足にけがをした生徒も千畳敷(2612メートル)まで行ける、登頂を断念しても日帰りの往復ルートなら帰路で合流できる―などを挙げる。
登山日和の7月20日。けがをしている生徒ら16人も交じって千畳敷の剣ケ池で集合写真を撮った。山頂へ向かうと、強い日差しが照りつけ、急登が続く八丁坂で表情も険しくなる。「もう帰りたい」。弱音がつい口をつくが、歩みが止まることはなかった。
山頂で生徒らは遭難記念碑がある北東の方角を向いて黙とう。
年月を経て事故を自らに引き付けて想像するのは難しいが、
優れた装備や気象予報が発達した現代は、山との向き合い方が多様化している。ただ110年を経ても自然の厳しさ、雄大さは変わらない。
かつて暴風雨で11人が亡くなった一帯。
〈上伊那地域の中学校登山〉
高等小学校の中央アルプス駒ケ岳への登山が始まったと言われている。
中ア駒ケ岳へ登山する上伊那地域の中学校の事務局を担う宮田村宮田中によると、今年は14校のうち11校が中アに登った。
このうち駒ケ根市東中は今年初めて麓のキャンプ場に泊まり、山頂に行かずに駒ケ岳ロープウェイ千畳敷駅周辺を散策。
伊那市の高遠中と長谷中は1泊2日の日程で南アルプス仙丈ケ岳(3033メートル)に登った。